工事成功コラム集

マンション・ビルの大規模修繕工事におけるタイル補修の必要性、工事の流れ、費用について

マンション・ビルの大規模修繕工事でタイル補修は必要?不要?
マンション・ビルの外壁には、耐久性に優れ、高級感のあるタイル張りが採用されるケースが多くあります。「耐久性が高いのだから、メンテナンスは不要」と考えられているオーナー様も少なくありません。実際、私自身が新築住宅営業をしていた頃は、会社から「タイルはメンテナンスフリー」と教育され、お客様にそのままお伝えしていました。しかし、外壁タイルの剥(はく)落に伴う事故が発生しているのです。今、こうして修繕業界で働いていると、タイルはメンテナンスフリーなどとは口が裂けても言えません。
確かにタイルそのものは耐久性の高い材料ですが、経年により接着力が低下したり、タイルそのものがひび割れたりと、剥落の危険性が高まります。外壁は紫外線や風雨に直接さらされています。事故の起きる前の調査と補修工事が重要となります。
タイル補修工事
法的にも2008年に国土交通省告示第282号において、外壁にタイルを使った一定規模以上のマンションには10年ごとに『全面打診調査』が必要だと定められています。(落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分が該当)

特定外壁調査

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外壁タイル剥落の原因
外壁タイルは、躯体であるコンクリートに下地モルタルによって接着されています。
外壁タイル自体は耐久性が高い外壁材ではありますが、タイルやモルタルが気温の変化による熱膨張と収縮を繰り返すことで接着面にひずみが生じ、浮きが生じます。さらに浮いた部分に雨水が侵入すると、劣化が進みます。侵入した雨水はコンクリートを中性化し、コンクリートの中にある鉄筋を酸化させ腐食が進みます。
また経年劣化のみでなく、新築施工時の技術不足(下地モルタルの圧着不足や型枠の剥離剤の洗浄不足、目荒らし不足等)がタイル剥落の原因となることもあります。
一回目の大規模修繕でタイルの浮きが多い場合は、往々にして新築時の技術不足が原因となっています。
外壁タイルの浮き
マンションのタイル補修工事の流れ
外壁タイル調査
(1)調査
【外壁打診調査】
外壁を打診棒で叩き、浮きや剥離などを検出する方法です。足場を組む必要が出てくるため、建物の規模によっては高所作業車を利用する場合や、屋上からロープにより降下しながら調査を行う場合もあります。調査員の目視による確実性の高い調査と言えます。
【赤外線調査】
赤外線サーモグラフィーを使用し、表面温度の差で浮きを確認する調査方法で、法的にも調査方法として認められ(2022年1月18日に平成20年国土交通省告示第282号を一部改正)、最近ではドローンによる赤外線調査も行われるようになりました。
(2)タイルの補修
①タイル浮きの補修(エポキシ樹脂注入)

タイル浮きの補修 エポキシ樹脂注入
壁面の打診調査で、タイルの浮き代(タイルが浮いている隙間)にエポキシ樹脂を注入することで充填可能と判断できた場合は、タイル張替を行わずに修繕可能です。タイル張替え工事に比べ、タイルを斫(はつ)る際の騒音や粉じん、産業廃棄物も発生しないため、環境にも優しい工事になります。
打診調査で修繕範囲を確認、マーキングを行い、工事を開始します。エポキシ樹脂を注入する穴をあけ(穿孔)、内部に粉じんが混入しないように丁寧に清掃します。エポキシ樹脂を注入する際は、打診確認を行いつつ、過不足のないよう慎重に進めます。エポキシ樹脂を注入後は、タイル浮き部をコンクリート躯体に固定するアンカーピンを挿入します。エポキシ樹脂がしっかり硬化するまで養生し、最後に目地を埋めて施工完了です。


②タイル浮きの補修(張り替え)

タイル浮きの補修 張り替え
壁面の打診調査で、タイルの浮き代(タイルが浮いている隙間)が大きく、広範囲がまとまって浮いているような重度と判断される場合は、タイル張替工事が必要となります。
打診調査で修繕範囲を確認、マーキングを行い、工事を開始します。張り替える部分の外周目地に沿って切れ込みを入れ、張り替えが必要なタイルを剥がしていきます。
張り替えが必要なタイルを全て剥がした後は、コンクリート躯体の清掃を行います。
コンクリート躯体の表面がつるつるな場合は、目荒し後、下地調整の工程を追加します。目荒しして、カチオン下地で食い付きを良くし、モルタルで付け送り(厚さ、段差調整)をして、下地の上厚を均等にします。
下地調整が終わると、張り替えるタイルを張るための接着剤塗りに進みます。クシ目ゴテを用いてしっかりクシ目を立て、接着剤を均一に塗っていきます。タイルを張り付ける時にクシ目を均し、タイルを張っていきます。タイルを張り終わったら、目地材を詰めます。
目地材をタイル表面から拭き取り、乾燥させて施工は終了、完成です。

 

③タイルのひび割れの補修
壁面の打診調査でタイルが割れてしまっている箇所については、タイル張替工事を行います。

タイル張替工事 施工前
施工前
タイル張替工事 サンダー入れ
サンダー入れ
タイル張替工事 既存タイルハツリ
既存タイルハツリ
修繕範囲を確認し、張り替える部分の外周目地に沿って切れ込みを入れ、ひび割れているタイルを剥がしていきます。
タイル張替工事 Uカット
Uカット
タイル張替工事 清掃
清掃
タイル張替工事 シーリング充填
シーリング充填
タイルを剥がした後、コンクリート躯体のひび割れに対しUカットを行い、シーリングを充填します。
ひび割れの太さに依りますが、目視でタイルがこの写真くらい割れていたら、タイルを張り替えるだけでなくコンクリート躯体まで補修しないと意味がありません。

タイル張替工事 接着剤塗り
接着剤塗り
タイル張替工事 新規タイル張り
新規タイル張り
タイル張替工事 目地材詰め
目地材詰め
コンクリート躯体の補修が完了したら、タイルを張り付けるために接着剤を塗ります。
ここで新たにタイルを張り付けますが、ひび割れが太く前回と同様にそのまま貼り付けてもすぐにタイルがされてしまう恐れがあるため、誘発目地を設けてタイルを張っていきます。
タイル張替工事 施工完了
施工完了
目地材をタイル表面から拭き取り、乾燥したらタイルのひび割れの補修が完了です。
この後、シーリングを充填して薬品洗浄して、すべての工程が完了です。
これで、またタイルが割れてくる心配はありません。
マンションのタイル補修工事の補修費用
タイルの補修は、実際に調査をしてみないと補修が必要な箇所を把握できません。そのため、見積もりでは打診調査の結果を元に外壁面積の3~5%程度に対する補修費用で算出します。調査を終えた段階で実際の補修費用を精算する「実数精算方式」が取られるため、見積もりより費用が高くなることも珍しくありません。

またタイル自体の生産が終了していることも多く、流通しているタイルで対応ができない場合は特注扱いになり、納期も2~3ヶ月程度かかってしまいます。

タイル補修費用が見積りより大幅に追加となる場合は、張り替え部位の再検討や、工法の変更などにより工事費の削減を検討することも可能です。しかしながら、建物の置かれた環境によっては劣化が想定以上に進んでいるケースや、安全上張り替えざるを得ないケースもあります。
いざという時のために、長期修繕計画での予算組みの段階できちんと「予備費」を準備しておくことも大切です。


タイル工事の保証書
保証書
タイルの剥落は、人命にも関わってきます。
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マンションの大規模修繕工事におけるタイル補修については、